Aug 4, 2015

アフリカマイマイ。ちなみに、雌雄同体。

スニーカーサイズの巨大カタツムリが、マイアミ周辺で大発生しているらしい。

パトリシア・ハイスミスの短編集の中に、一人の男とカタツムリのことを書いたものがある。ピーター・ノッパードという金融マンが、食事に出されようとしていた食用カタツムリのある行為をキッチンで目にして、食べずに飼育しだすというお話。

ダンスを踊るように2匹のカタツムリが、立ち上がって抱き合うような仕草をしていることを認めたノッパードは、いままで生物など全く興味がなかったにもかかわらず、百科事典などでその行為を調べ始める。なかなかカタツムリについて記載してものがなく、諦めかけていた時、ダーウインの「種の起源」の中のある文章を見つける。「カタツムリの交合は、動物界では例をみないほどに官能的だ」という内容で、アンリ・ファーブルの昆虫記からの引用らしい。
それを見つけたノッパードは、自分も少数の専門家の仲間入りをしたような気分になって、カタツムリの飼育にのめり込んでいく。

ノッパードの愛情を一身に受け、水槽が増え、書斎すらカタツムリの巨大水族館と化す。そう、カタツムリは驚異的な速さで増えていくのだ。
まあ、そのあとどうなるかは大体想像がつくと思う。

その中に愛するカタツムリ達の世話をしながら、どれだけ愛しいかを書いた面白い表現がある。

それからまたレタスをじかに食べさせ、あちこちから眺めながら、ほかの人が日本の版画を見る時のような満足感を味わうのだ。
いいね。この部分。パトリシア・ハイスミス最高。


おまけに、パトリシア・ハイスミスがすごいのは、カタツムリの交合を描写したのは、ハイスミス自身なわけだから、

もう一つ別の小さな触手みたいな白みがかった棒が一方のカタツムリの耳からでて・・・ところがもう一方のカタツムリの方からも触手が伸びて、相手の触手をはねのけるのを見て・・・

と観察しているのは彼女なわけで、カタツムリが交尾の際に突き刺す鋭い矢「ラブダート(Love dart)」をすでに発見していたというわけ。もちろん、それが、交尾相手の生殖能力を低下させ、寿命を縮める可能性があることを、今年の3月に日本の生物学者が発表したことを彼女は知るよしもない。

おまけに、相手の将来的な生殖能力にダメージを与えてもそれほど不都合はなく、ラブダートを使うことでより多くの卵子を受精させることができるのなら、相手が多少の犠牲を払おうが些末な問題だとカタツムリが言ったら、ハイスミスは大笑いして喜ぶことだろう。

パトリシア・ハイスミスは女だけど男だ。

才能がある人間というのは、性別に支配されない何かを持っているのではないかと思う。別にそれは性的指向というわけではなく、人間の性別を男と女というふうに分けなくてはいけないなら、それをひっくるめた「人間」という種。どっちかによりすぎてる種ってちょっと苦手。

それはそうと、アフリカマイマイは食べられないし、だいぶ危険らしい。おまけにこれから繁殖期にはいるとの事。駆除にはナメクジ駆除剤と探知訓練を受けたラブラドール犬が出動するらしい。そんな訓練を受けさせられてるわんこがいるのか。わんこ、頑張れ。食べるんじゃないぞ。
そんでもって、雌雄同体

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