Apr 10, 2008

醍醐桜

夜中の番組を見ていたら、岡山の醍醐桜の下で、ニューヨークから来たポーランド出身のピアニストがピアノを演奏するまでのドキュメンタリーを放送していた。その人はラフマニノフやなんかに師事していた様な年からピアノを弾いている人で、この上ものなく素敵に微笑む人だった。
地元の歯医者さんが、クラシックが好きで、たまたまそのピアニストの方に台湾であって、それから、4-5回日本に呼んでリサイタルを開いてもらっているらしい。その歯医者さんは、「桜の下でピアノが弾いてみたい」と言った彼女の言葉を、はじめは笑って聞き逃したけれど、だんだん忘れられなくなって、実現に奔走する様になる。その上、クララ・シューマンの(シューマンの奥さん)古くなって捨てられそうになったピアノを自費で復活させて、そのピアノを小高い山の上の1000年桜の下に置いた。桜とピアノと年老いたピアニストの女性。
ちょっと、私が見た感じではそんな話で伝わりにくいかもしれないけれど、青い空の下で1000年繰り返し咲き続けた桜と、150年くらい前のピアノ、ミスタッチが多くはなっているものの、そんなことでピアノの旋律を壊す訳もない彼女のブラームスと、黒子の歯医者さん。
番組の最後で彼女が「あの桜にとても魅かれるのは、いろいろな沢山の人たちのサポートがあって咲き続けていられる事が素敵だから。そうでないと今まで咲き続けられなかったから」と、にこにこして話していた。私は番組を見ていて、歯医者さんも地元の人も大変だっただろうなあ。とか、1000年咲き続けた桜ってなんだか坂口安吾じゃないけれど、何かが違うんだろうなとか。そのレベルで感動してたのに、彼女は事もなげに、その美を生かし続けてくれた、周りの人たちへの賞賛を口にしながら微笑んでいた。桜もすごい、でもその美しさを守ろうとした人たちもすごいと。
そうして、彼女は自分と醍醐桜が似ているとも言った。
まだまだだな、私って。と思いながらベットに入った。
でも、目覚めはすこぶる良かった。

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