Jun 15, 2013

美しい線


今、Galerie RECOLTEで行われているTokay Gecko Award 2013 グランプリ作家の戸田早紀展。

彼女の作品を一次審査で初めて見た時、私には、美しい色も散りばめられた裸体も、目に入ってこなかった。
私が一次審査を通した理由は、作家が描こうと思ったところに、淀みなく、正確に引かれた、美しい線だ。圧倒的に美しかった。
じっくり見て欲しい。
日頃からよほど気にして沢山描いていないと、こんな線はなかなか描けない。

一本一本、勿論、モチーフとなる裸体を描き出すために引かれているわけだが、久しぶりにこういう美しい線を見たと思う。

その後、裸体の形が目に入ってきた。
こちらも、どの裸体も形になんの不備もない。個体が認識されるような、例えばはっきりとした表情がある顔があるわけでもないのに、それなのに躍動する生き生きとした命を宿している。
今にも、声すら聞こえてきそうだと感じた。
形を捉える力も線も、本当に綺麗だ。

そして、最後に色彩とバランスが見えてきて、いい作家だなと感じた。
初期の作品も飾ってあるわけだが、今描いている作品に移行したセンスやバランス感覚も、これからの変化が楽しみになるような動きを見せている。

絵を見る際、作家が意図してやりたい表現や、手法を、きちんと出来ているかも大切に見るようにしている。チョットくらいまだ全体的に未熟でも、作家の現時点での方向性がその絵の中に見て取れて、表現しようとしていれば、私はいい絵だと判断する。

勿論、鑑賞してくださる方は「色が綺麗ね」「可愛い絵ね」で十分である。そこに見るたびチョットだけ「へえ」が加わっていくと、俄然、楽しくなると私は思う。これは、批評しろとか、なぜこの絵画がいいのかとか勉強しろとかいうのではなく、自分で見て、その絵の中に自分なりの面白さや、好きな部分を見つけることでいいと思う。

美しい線。それが、私の中のグランプリの理由です。



Tokay Gecko Award 2013 グランプリ 戸田早紀展 〜6/16(日)まで.



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