好きな事が好きでなくなる瞬間

好きな事が好きでなくなる瞬間は、多分、その好きな事にそれ以外の事が加わったときとか、なんだか制約みたいなもの、例えば閉め切りとか条件みたいなものが加わったときとかなのかな。

でも、何の制約もなく好きな事をやっていても、その事をずっと好きでいられるだろうか？

絵を描くのが大好きで、年中描いてたとする。好き勝手に。そうだな幼稚園生くらいだったら、好き勝手できるかな。
そのうち、誰かに見せたいなあとおもって、お友達のうちに見せに行こう！と思ったとする。ふと、窓から外を見ると、なんだか雨が降っている。大好きな絵だから濡れないように大切に大切に包んで、お母さんにレインコートと傘をだしてもらって、雨の中出発する。大好きな絵を早く見せたいから、水たまりなんかへっちゃらで、ずんずん進む。どんどん進む。

隣の家のわんこに吠えられても今日は平気。だって、大好きな絵を大好きなお友達に見せに行くんだもの。

いい香りのするパン屋さんにも寄り道なんてしないんだ。横断歩道も雨で光ってる。

お家を出たときはすごく元気だったけど、なんだか疲れてきちゃう。自転車で来る時はそんなに遠くないのに、今日は雨で歩かなくちゃ行けないから、なんだか遠いなあ。

あとちょっと。あの角を曲がるとお友達のお家につく。もうちょっと。

ピンポーン！

ピーンポーン！

誰もいない。

泣きそう。大好きな絵を濡れないように抱え直す。
でもでも、泣きそう。

ひとりぼっちで帰らなきゃ行けない。今来た所を、同じ道を。
すごく時間かかりそう。寂しくて、哀しくて、
絵なんか持ちにくいし、嫌だ！いやだ！やだー！
絵も、見てもらえなかった。とても良く出来たのに、すごくよく出来たのに、大好きな絵だから大好きな友達に見せたかったのに。
でも、お家に帰んなきゃ行けない。帰らなきゃ行けない。
何にも楽しくない！なーんにも、たのしくなーーーい！
もう、絵なんか描くもんかっ！せっかく描いたのにっ！

でも、帰らなきゃ。お母さんも待ってるし。

がんばって、がんばって、歩こっと。
邪魔になるけど、やっぱり大好きな絵だから、持ってかえろ。
ちゃんと。

お家について、なんだか分けわかんなくて、わんわん泣いて、わんわん泣いて、お風呂に入って、ハンバーグを食べた。
ベッドに入る前にまた絵が描きたくなった。
腹が立つけど、絵が好きだ。

なーんだ。どんなに制約があっても、条件があっても、結局、好きな事なら嫌いにならないんじゃん。
心配なんてしなくていいか。

時間とか、なんとかがきっと解決してくれる。
もしも描けなくても、描かないなんて出来ないさ。