すれ違い様に、散歩していた女性が「きれいねえ」と木立の方をを見て言ったので、私もなんとなく振り向いて見た。
私の目には新緑の木々が映っただけで、もちろんそれはそれで美しいのだけれど「きれいねえ」と感嘆するほどのものではなかった。
と、私の表情に気づいたその女性は「山藤よ」といって、私の目線よりはるかに上の方を見て言った。
思いっきり上を見てみると、おっきな背の高い木のてっぺんに藤の花がわんさか咲いていた。その藤の花は、全然違う種類の(多分くすのき?)木の幹の上の、葉っぱの上の上に咲いていて、教えてもらわないと絶対気付かなかったし、確かに不思議な光景でとても美しかった。
その女性は「近くからは見えないものね」と。「遠くからでないとね」と。
私はその人が、さっきまで知らなかった(実際のところ今もどこの誰かもしらないけど)その人が、大好きになった。もっともっと話しがしたいくらい好きになった。そう言って笑った顔も、まぶしそうに藤の花を見上げた瞳も。
人って不思議だ。関わるとうっとうしいけど、いないと困る。事もある。
いいじゃん、いいじゃん。そういうのっていい。
何があっても、何もなくても、そういうのっていい。
よくわからないが、なんだかとってもご機嫌になった。
あんなにも高いところに藤の花がわんさか咲いてる事を教えてくれて。あの藤の花もニコニコだろうと思う。だから、私も誰かに教えたくなった。
早速、こんな風に。
日々がいつもこんな風だったらいい。
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