もう、何年くらい前になるかな、韓国に企画展をするために作家と一緒に行ったときの事。その作家は、Jim Foster というコロラドに住む彫刻やブロンズや平面を作る作家で、はじめは緊張しているのか全然話してくれなくて、おとなしい人だなあなんて思ってたら、「僕が住んでいる所は、ひと月にいっぺんかもっとの確率でしか人に会う事がないから、人間と何を話していいのかわからない」と、嘘の様な本当の話を小さい声でポソッと言った。私がものすごく驚いた顔をしていたら、私の顔を見ながら耳まで赤くなっていったのを思い出す。
そのあとは、いろいろ話しているうちに、たいそう仲良しさんになって、レセプションの時には一緒にダンスまで踊るナカになった。今でもメールを交換しているが、日本の男性と違って、ものすごく甘い台詞の書き出しで書いてくれる。ちょっと口に出すのは恥ずかしいが。My sweet heart くらいではないですよん。
あの時、韓国でソウル大学や美術大学を案内してくれた黄先生という彫刻の作家の方がいた。その人の作品が好きで何点か所有していたので、なんだかドキドキしながら挨拶をした。黄先生は黄先生で、日本から来る画廊の人で自分の作品を持ってくれている人という事ではじめは緊張していたが、空港に迎えに行ったら、わかくてかわいらしい学生の様なお嬢さんだったので(これは、あくまでもあとからご本人がおっしゃった事)面食らった。と言われた。でも、その話をする頃にはやはりチークダンスに誘われていた。
その後、どうしても見てもらいたい!という事でMOON SHIN美術館に連れて行ってくださった。その時、既に美術館は本日の営業は終わりました状態だったのに、黄先生が「あけてくださいな、お客さんを連れて来たんで」みたいな事を係の人に言ったら、オープンセサミ!の用に門が開いたときは、あんなに踊りまくっていた人がなんだかものすごく偉いんじゃないんだろうかと思えたもんだ。そういえば、空港に着いたときもみんなパスポートもって長い列を作っていたけど、私たちだけ並ばずに横っちょから入れてくれたなあ。
私の好きな作家の一人に、Graham Bennett というニュージーランドのクライストチャーチにいる、一言ではいえないけどおもに立体を作る作家の人もいる。自分の作品に使われている石の話をしてくれて、宇宙とかその他の目に見えないものとの対話を沢山教えてくれた。その頃キャナルシティが出来た頃で、「そういう所あるけど、一緒に行く?」って聞いたら、「行く」っておっしゃるので、そこのカフェで夜まで話していたら、すっかり次のデートの話になっていた。
私は、自分の見た目にちょっとコンプレックスがあった。
画廊のオーナーなのに、全然それっぽくない(どんなのがそれっぽいかは定かではないが)。特にその頃は。いつでもどこでも日本では小娘扱いされていたので、少々フンッだ!って所があった。でも、逆に海外の作家の方とはすぐに仲良くなって、あちらも固い話だけじゃなく、おいおいそんな事いっていいの?くらいの話をしてくれるようになる。そういう時、あーこんな感じでも話してくれる人は話してくれるんだし、まあ、これはこれでいっかあ。っていう自信になった事を思い出した。
どうして思い出したかというと、最近、長い事生きて来たなあなんて思い始めたから。うーこのままこんな感じで終わって行くのだろうかなどと思い始めたから。
でも、去年の夏、プリンストンで再会したMargaletさんに笑われそうだ。「まだまだよ」って。
彼女は、確か今年で90才じゃないかな。なのに、いまでも、作品への情熱は数限りなく、あれだけ作品と向かい合って来たのに、こんな私に自分のアトリエで、新しい作品のコンセプトと思いを熱く語ってくれてる。そうしてその後「ねえ、どう思う?このメッシュの作品、どうしたらもっとコンセプト通りに見える様に展示できると思う?」と訪ねてくれる。
80才近くにして、やっと南極に行く事ができたのよって笑って写真を見せてくれた彼女と、作品の事を語る彼女は同じくらい素敵だ。
作品や作家との出会いや思い出は、私にとっては一番の薬だ。
どんなことがあっても、思い出すだけで元気になれる薬。
それに、クローズしている美術館を開ける力がっても、ものすごく緻密に作品のコンセプトや意義を考え続けて真摯に作品を作り続けていく強さをもっていても、ある面ではお茶目でとてもやさしい。ものすごくやさしい。そうして、芸術を志す若者に対して見せる愛情はとてつもなく大きい。見た目だけじゃわからない事もあるよね。
JIm の所にも、Benettoさんの所にも再三誘われたけど行ってないからなあ。行ってみようかなあ。でも、Margaletさんにもまた来るねって約束したしな。あーまだまだ、このままでは終われないなあ。
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